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コトミチカ

大学10回生のサラリーマンの日記

立ち飲み屋が立ち食いラーメン屋になってラーメン屋になった話

 

2013年 冬  ~立ち飲み居酒屋~

 近所にとある立ち飲み屋がオープンした。6畳程度の空間には、コの字型のカウンター、円形のテーブルを中心に置く。焼酎100円・金麦200円、プレモル350円、小鉢料理は100円から食べられる超庶民的価格。、気さくなマスターのキャラクターも相俟って、そのお店は1年ほど続いた。常連客も少なくなく、決して繁盛していないお店ではなかった。
 私はこのお店にちょくちょく通い、ひょんなことからマスターとは飲み仲間(同業者としてでもある)としてプライベートでも親しくしてもらい、また常連客とも良い間柄になった。
 閉店の理由は、売上単価があまりにも低すぎたためだ。サラリーマン一人が金麦を二杯飲み、小鉢2つと焼き料理を注文しても会計は1000円程度。たいていの客は1000円でお釣りがもらえる程度の注文だった。その上、10名程度の客スペースには回転率の高さが求められる。料理やドリンクは頻繁に出るし、お会計から後片付けまで手数は多い。時には(度々かもしれない)100円の安酒数杯で長居をしては接客トークを求める年配の客もいた。飲食店としてはどう見ても手が足らない。しかし、バイトを雇う余裕がないほど利益率は低かったのだ。ついにマスターは身体を壊して閉店が決まった。
私の愛したひとつの立ち飲み屋がこの世からなくなった。

2014年 秋~冬 ~立ち食いラーメン屋~

 立ち飲み屋が閉店して間もない頃、跡地にラーメン屋がオープンすることが告知された。
 開店日は半額セールを行っていたこともあって、立ち寄ってみた。居抜きのこのお店は、先代当主のスタイルを踏襲してワンコインでラーメン一杯を提供する超庶民的ラーメン屋として生まれ変わったのだった。もちろん店主は違う。
 ワンコインのラーメンとして可も無く不可も無い、博多風豚骨味。立ち食いスタイル。高菜は大盛り無料。やっぱり安い金麦。気さくな中年店長。 
 何回か通った頃には店長とも会話が弾むようになり、先代の立ち飲み屋の話や店長の身の上話も聞くようになった。開店日だけ雇ったバイト、独立の苦労、ただただすり減る貯金と体力......。そして年末、店長の口にした一言「このお店、年明けにはたたんでるかもね、ははは」 言葉通り、桜咲く春を前に閉店した。
 お察しの通り、客が入ってもちっとも儲からないラーメン屋だった。店長から聞いたところによると、オーナーからフランチャイズ代が毎月ウン万円しょっ引かれ、原材料はオーナーからの調達が義務づけられている。1杯500円のラーメンの原価は350円。さらに家賃光熱費で20万円近くの固定出費。なるほど立ち飲み居酒屋より過酷な状況だった。その過酷さは、店長の入院による長期休業という名のサイレント閉店が物語っていた。

2015年 春~夏 ~椅子のある幻の立ち食いラーメン屋~

 リニューアルオープンらしい。外からちらっと覗くとメニューはそのままで、なんと背の高いパイプいすが設置されている。あの高いカウンターにあった椅子がよく見つかったものだ。お値段は据え置きとはいかず50~100円アップ。中年店長が帰ってきたと思い一度だけ食べに行ったが、中で構えていたのは二十代前半風の男女の店員。正直、味が悪くてがっかりしただけだった。
 その後も空腹時に何度かお店の前は通り過ぎても食指は動かず。お客が入ってる様子どころか店員の有無も確認できなかった。繰り返されるリニューアルオープンにさすがの地元民・ラーメン通も見限ったか。店外には早くも「店長候補募集」の貼り紙が堂々と存在感を放っていた。
 そんなある日、予告なく休業日が続いた時期があった。ついにまたつぶれたか...店の扉の下には公共料金の領収書が長いこと挟まったまま放置されている。夜逃げを思わせる幕引きだった。

2015年 秋~ ~帰ってきたラーメン屋~

 「あの○○が帰ってくる!」またまたリニューアルオープン。また夢ある若者がオーナーに「自分のお店が持てる」と騙され搾取されてしまうのか......とこちらも可哀想な気持ちになってくる。
 でも気になってしまうのが男の性。一杯650円からのラーメンに「好評につき替え玉一回無料」「ライス無料」という大盤振る舞いな張り紙を目にしてから2、3ヶ月は経っただろうか。未だ閉店する気配はない。ついに優秀な店長がやってきたのか!無事に年を越した昨日、私も死んでは生まれ変わるお店へ久々に行ってみることにした。
 注文したのは、こってりラーメン(¥750-)

超濃厚ラーメン屋としての完全復活

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 単刀直入に言うと、美味かった!値段の割にじゃなくて、連綿と連なるこのラーメン屋の歴史上で一番美味い。
 天下一品よりも粘度のある濃厚豚骨スープはめいらくのコーンポタージュを彷彿とさせる。ぎっとぎと脂には麺が絡まず溺れてしまい、全くすすれない。またこのスープの熱いこと熱いこと。替え玉を投入したタイミングに口の中を火傷したほどだった。卓上の高菜・てんかすはおかわり自由で、スープの辛みと相性が良い。白ごまだっておかわり自由だよ!(←ここ嬉しい)ご丁寧にラーメン用のスープまで備え付けてあったり。
 不死鳥のごとく蘇ったラーメン屋の新店主はこれまた20代前半風の強面お兄ちゃんだったけど、帰り際に見せてくれた笑顔が良かったのでまた食べに行きたいと思います。

 でも、1日限定20食のつけ麺が閉店間際の21時にまだ残ってるのが期待メニューだったり、不安材料だったり。